銀座や青山の和菓子好きの間で知られる「ヒガシヤ」。その“ひと口羊羹”に出会ったのは、思いがけずシャネルの展覧会でした。
2025年9月30日から10月20日まで、東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーと東京シティビューで開催されている「la Galerie du 19M Tokyo」。
シャネルの職人たちによる、芸術的な手仕事を紹介する展覧会で、刺繍や羽根細工、ツイードなど、まるでアートのような繊細な作品たち。
職人の手仕事に宿る美しさに圧倒されながらも、どこか静かな時間が流れていました。
その展示の余韻の中で立ち寄った会場ショップに、ひっそりと並んでいたのが「ヒガシヤ」の和菓子たち。
その中でも特に惹かれたのが、手のひらサイズのひと口羊羹でした。見た目の端正さと、和の中に漂うモダンな空気。
“シャネルとヒガシヤ”という異なる世界のようでいて、どちらにも共通する美の哲学を感じました。
ヒガシヤの美意識が詰まった“ひと口”サイズの和菓子
「ヒガシヤ」は、銀座に本店を構える和菓子ブランド。「日々の菓子」をコンセプトに、伝統的な和菓子を現代のライフスタイルに溶け込む形で提案しています。
シンプルで美しいデザインの包装、素材そのものの味を活かした繊細な甘さ。
まるでアート作品のように、一つひとつの菓子に“静けさ”が宿っています。
今回出会ったひと口羊羹は、まさにその世界観の象徴。

本来は会場でお茶と一緒に味わえるそうですが、私が訪れたのは14時過ぎ。
すでにお茶の提供は終了していたため、羊羹だけを持ち帰り、家でゆっくりと味わうことにしました。
手のひらにすっと収まる、小さな直方体。
包み紙の佇まいからして、すでに洗練されています。
展覧会の空気と同じく、“手仕事の美しさ”を感じる和のデザイン。
実食レビュー|椰子の実・無花果・濃茶、それぞれの個性
ひと口羊羹は、味のバリエーションが豊富。
今回はその中から椰子の実・無花果・濃茶の3種類を選びました。
どれも個性的で、それぞれに小さな物語があるような味わいでした。

ヒガシヤ「ひと口羊羹」 ¥400(税込)/ 1棹(26g)
- 椰子の実
ココナッツならではの食感と、ふんわり広がる甘い香りが魅力の羊羹。口に入れた瞬間、やさしい甘みとまろやかなコクが広がり、南国の香りがほんのりと感じられます。
どこかエキゾチックで、伝統的な羊羹とはひと味違うモダンな味わいでした。 - 無花果(いちじく)
干し無花果のペーストが小豆にたっぷり練り込まれた羊羹。ひと口食べると、無花果のやさしい甘さと粒々とした食感がふわっと広がります。
果肉の粒感と自然な甘酸っぱさがアクセントになっていて、紅茶にも合いそうなフルーティーで軽やかな味わい。
“和と洋のあいだ”を感じるような上品なバランスで、今回食べた中では一番印象に残った一品でした。 - 濃茶
香り高い抹茶を贅沢に使った、甘さ控えめで風味豊かな羊羹。しっとりとした食感とともに、ひと口目から濃厚な抹茶の香りが広がります。
苦味と甘みのバランスが絶妙で、まるで“和のエスプレッソ”のような深み。落ち着いた大人の味わいでした。
Amioシャネル展では3種類のみの販売でしたが、実はこのひと口羊羹は全4種類あるそうです。もう一つは『焦蜜(こがしみつ)』というキャラメル風味。次回お店を訪れる際には、ぜひ味わってみたいと思います。
アートの余韻に寄り添う、静かな甘さ
シャネルの展覧会「la Galerie du 19M Tokyo」では、職人たちが生み出す刺繍や羽根飾り、ツイードの細工など、目を奪われるような繊細な手仕事が並んでいました。
それらの作品に共通していたのは、“美しさは細部に宿る”ということ。

ヒガシヤの羊羹にも、まさに同じ精神が流れています。派手な装飾はないけれど、素材の味を最大限に引き出す丁寧な手仕事。
ひと口ごとに、静かな余韻が広がる。
アートを見た後に食べる和菓子として、これ以上ない組み合わせでした。
まとめ|センスを感じる小さな贅沢
シャネル展で出会ったヒガシヤのひと口羊羹は、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いでした。
洋と和、ファッションと菓子。
一見遠いようで、その根底には“手仕事の美”という共通の哲学があるような…。

一つひとつが小さいのに、心に残る満足感。
仕事の合間や夜のほっと一息に食べたくなるような、上品で静かな甘さ。
おしゃれな展覧会の余韻を、自宅でもう一度味わえるような時間でした。
自分へのご褒美にはもちろん、贈り物にも間違いなく喜ばれる、センスを感じる小さな贅沢です。

